LLCRとは

May 22, 2022
Finance
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用語解説目次

LLCRとは?

LLCRの特徴

平均DSCRとLLCR

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LLCRとは?

LLCR(Loan Life Coverage Ratio)は借入期間中の返済能力を見るための指標だ。事業の開始が予定されている日(起算日)から借入金が完済されるまでのキャッシュフロー(CFADS)の合計を現在価値に換算した値を借入金の残高合計(Total Debt Services)の現在価値で割る。割引率は、借入金の利率を適用する。

 

LLCRはDSCRに似ていますが、長期間に渡る特徴を持つプロジェクトファイナンスにおいてよく用いられる指標である。
DSCRが単期における指標であるのに対し、LLCRは融資の全期間をカバーする指標だ。借入金残高は起算日における残高を用いる。起算日におけるDSRA(Debt Service Reserve Account:別の記事で詳述しますが、万が一のケースに融資返済に充てる為の積立金)内の積立金額は借入残高から減算する。他の準備口座金額は控除しない。

 

LLCRの特徴

LLCRは企業やプロジェクト主体の返済能力を測る指標であるが、各期のキャッシュフロー評価に用いられる DSCR (Debt Service Coverage Ratio) とは異なり、借入金の全返済期間を対象とした指標である点に違いがある。運営開始日を起算日とするだけでなく、運営開始後の各時点を起算日とすることで、その時点から借入金完済までの運営キャッシュフローと借入残高とを比較することもある。そのように求めた LLCRは、ローリング LLCRと呼ばれることがある。プロジェクトが生むキャッシュフローの合計値がローン残高の何倍あるかを表しており、1.0倍 (1.0x) である場合、そのプロジェクトはローン返済に必要なキャッシュフローを丁度生み出しているという意味合いになる。LLCRの数値が高くなればなるほど、レンダーにとってはリスクが低くなる。プロジェクトファイナンスにおける融資契約では、LLCRの水準はコベナンツとして指定される。尚、事業者側からはフリーキャッシュフローの余剰金はLLCRの計算における借入金の金額から差し引かれているべき、またはレンダー側からはNPVの計算の為のキャッシュフローに加えられているべきという議論がなされることもある、この余剰金の使い道として配当等の分配が想定されている場合、このような主張は適切ではない。

 

平均DSCRとLLCR

上述の通り、プロジェクトの返済能力を測る指標には、当期の返済能力を測るDSCRもあるが、予想されるDSCRが毎年同水準であれば、平均DSCRとLLCRは同じ値になる。プロジェクトの早期におけるDSCRが高い場合は、平均DSCRはLLCRよりも高くなる。反対に、プロジェクトの早期におけるDSCRが低い場合には、平均DSCRはLLCRよりも低くなる。LLCRの弱点としては、LLCRは融資期間中の全キャッシュフローの現在価値を以て平均を計算するため、返済能力の低い時期を可視化することが出来ない点である。LLCRは長期間の返済能力を見ることができるが、DSCRの方が直接的に至近の返済能力を示すため、レンダーはLLCRよりもDSCRを重要視することが一般的だ。このとき、DSCRに要求される最低水準をLLCRの水準に設定する事が一般的。

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