IRR (Internal Rate of Return) とは

May 22, 2022
Finance
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用語解説目次

  • IRRとは
  • IRRと利回りとの違い
  • MIRR(修正内部収益率)とは?
  • エクイティIRRとプロジェクトIRRの違い
  • IRRの目安
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IRR(アイアールアール)とは?

投資ファンド等では、投資リターンを表す指標としてIRR (Internal Rate of Return) がよく使われます。IRR は、「お金を複利で運用した時の利回り」の事をいいます。例えば、IRR5%は「預けたお金が年率5%で複利運用された」ことと同じです。IRRはエクセルを使えば簡単に計算でき、色々な投資案件を比較する時に役立ちます。また、IRRとは、NPV (正味現在価値) がゼロとなるような割引率 (Discount Rate) の事です。下図のように割引率 (Discount Rate) が0%の場合、NPV が100 の案件があると仮定します。Discount Rate が上昇するにつれ、NPV は下がり、やがて 0 となります。この 0 になる時点での Discount Rate が IRR です。

IRR (Internal Rate of Return) と NPV (NetPresent Value) の関係

IRR は、投資金額や投資期間、リターンのプロファイル等、あらゆる投資条件が異なる事業投資案件の中から、もっとも収益性の高い投資先を判断できる指標です。実際にその利回りで運用できると考えるよりは、複数の投資事業の収益率を比較する使う指標として活用されます。また、IRRの計算式は以下の通りです。

 

金融電卓等で簡単に計算できますが、エクセルのIRR関数を使えば更に簡単に計算できます。

=IRR(初期投資額:最終年度のキャッシュフロー※)

※初年度のキャッシュフロー(初期投資額でありマイナスの数値)から最終年度のキャッシュフローまでを範囲指定する

また下図の様に、案件のキャッシュフロー の特徴次第で、IRR が複数存在することもあります。

 

IRRと利回りの違い

定期預金や上場株式等の投資商品等に対するリターンを示す言葉として「利回り」という言葉を耳にする事も多いと思います。一般に投資の利回りは以下の式で計算できます。これに対し、IRRは「お金の時間価値を考慮した利回り」を表します。具体例を見てみましょう。シンプルにする為に、税金を無視して考えます。100億円を投資して、5年後に元本と併せて200億円のリターンがある投資案件Aと、同じく100億円を投資して10年後に300億円のリターンがある投資案件Bを比較します。まず、利回りで比べると両方とも20%となり、優劣がつきません。他方、IRRを計算して見ると、投資Aの方がリターンの額面金額は少ないにも関わらず、IRRは投資Bよりも約3.3% 高いという結果になります。

これは、IRRがお金の時間価値を反映した数値であることに起因します。14.9%の複利で運用ができる場合、10年後の300億円よりも5年後の200億円の方が価値が高いという事を表しています。実際、もし5年目に200億円が手元に入り、14.9%で5年間運用できた場合、200億円x(1+14.9%)^5 = 約400億円となり、10年目時点において投資Bよりも高いリターンを得る事が出来ます。例えて言うならば、5年目にこの投資Aから200億円を引き出して、利率14.9%の定期預金に残りの5年間 預け入れたケースと、初年度に同じ金額を投資して10年目に300億円を引き出す投資Bを比べた場合、投資Aの方が価値が高いという評価を行うのがIRR関数を用いた分析です。

MIRR(修正内部収益率)とは?

上記の評価が成り立つには「残りの5年間 預け入れられる利率1.9%の定期預金」が必要となります。しかし、現実的には投資案件から得られた収入を同じ利回りで複利運用するのは困難です。

それを克服できるのがModified IRR (修正内部収益率:MIRR)です。MIRRは、発生したキャッシュフローを異なる利回りで運用した場合のIRRです。計算式で表すと以下の通りです。(出典:Wikipedia)

エクセルのIRR関数にはもう一つ「MIRR」関数というものもあります。(比較的新しい関数なので、Office 2016以降のバージョンに限定されます)

 

エクセルのMIRR関数は以下の構成となっています。

=MIRR(範囲,資金調達利率,再投資利率)

 

●「範囲」はIRR関数と同じで、初期投資から最終年度までのキャッシュフローを指定します。

●「資金調達利率」は支払額(負のキャッシュフロー)に対する利率で、通常は0で構いません。

●「再投資利率」は収益額(正のキャッシュフロー)に対する利率で、この部分に「得た収入を何%で運用するか?」を設定します。

 

つまり、投資Aから得られた収入をすべて、年率1%の定期預金で運用した場合にIRRはどうなるか?というシミュレーションができます。

この場合、再投資利率に1%を入力します。「=MIRR(初期投資額:最終年度キャッシュフロー,0,1%)」

結果は以下の通りとなります。投資Aは6年目以降の5年間で1%の利率でしか運用できない場合、MIRRは7.7%に留まってしまい、投資Bの11.6%に及びません。

 

MIRR

投資A

7.7%

投資B

11.6%

 

 

エクイティIRRとプロジェクトIRRの違い

インフラや不動産への投資では、自己資金(Equity)+借入金(Debt) を使って投資を行うことが一般的です。

この場合に、自己資金(Equity)のみを「初期費用」として計算したIRRを「Equity IRR(レバレッジ考慮後の収益性)」といいます。自己資金(Equity)+借入金(Debt)の投資総額を「初期費用」として計算したIRRを「Project IRR」といいます。

別の回で詳細な説明を行いますが、自己資金(Equity)+借入金(Debt)の合計を初期投資として得られるキャッシュフローの事をProject CashFlowと言います。同一の投資案件において、自己資金(Equity)と借入金(Debt)が両方存在する場合、得られるProject Cash Flowから、返済義務のある借入金(Debt)を優先して返済し、残ったキャッシュフローがEquity Cash Flow、すなわちEquityを拠出した投資家にとってのCash Flowとなります。

 

一般的に、返済義務がなく、拠出したお金が戻ってくるリスクが高いEquityと比べて、返済義務のあるDebtはリスクが低いと見られ、その分 調達コストが低いです。その為、上図の様に、同一のProjectIRRを持つ案件において、投資総額におけるDebtの比率を高めると、梃子の原理の「梃子(てこ)」の様にEquity 投資家向けのIRR (Equity IRR)が上昇する効果があり、これをレバレッジ効果と一般的に呼びます。レバレッジは日本語では「梃子」を意味します。

 

以下に、先程の投資Aについて、Project IRRは14.9%でしたが、初年度の投資100億円に対して、金利5%の借入金を活用するとどの程度 Equity IRRが押し上げられるかを示したのが以下のグラフです。(単純化するべく、税金の影響は含めず、元利返済も最終年度一括と仮定しています。)下図のLeverageは総投資額に占める借入金の割合を示しています。

 

Equityを極力少なくし、ほぼDebtで投資をすると Equity投資家向けのリターンは極大化し、すなわちEquity IRRは高い値を示します。このような時は、その投資案件自体の収益率を測るために、Project IRRの値も確認しておくと良いです。

尚、一般的に表示されるIRRは「Equity IRR」である場合が多い事も付記します。

 

IRRの目安

投資の意思決定をする上で、Go/No Goの境目となるIRRを「ハードルレート(最低限必要なIRR)」といいます。

 

個人の場合、自分の中でハードルレートを決めて、「IRR x%の投資案件だと面白味がないからやめておこう」で良いのですが、企業や機関投資家等の場合、自身が資金を調達する際のコストに、当該投資事業が持つリスク要素も加味した分のリターンが得られなければ、真の意味で投資はペイしません。

例えば、資本コストが4%の企業があったとして、IRRが10%の投資案件が2つあり、どちらかに投資したいとします。「どちらの案件も資本コスト以上のリターンが得られるので、入口からNo Goという訳ではないが、ベンチャー企業への投資だとIRR10%は手が出せないが、比較的安全なインフラ投資なら同じIRRでも魅力的」と考えることもできます。

 

不動産投資のIRR

●JREIT:インカムゲイン狙い/借入金50%以下/運用期間10年以上/目標IRR5%

●海外投資銀行:キャピタルゲイン狙い/借入金70%以上/運用期間2年以内/目標IRR20%

出典)https://www.smtri.jp/report_column/report/pdf/stbrinews02.pdf

 

上記を参考にすると、目標IRRが高い場合、短期間での売り抜けを通じたキャピタルゲインを想定していて、目標IRRの低いJREITのような投資では、長い運用期間の中でインカムゲインを狙っていることもわかります。

 

インフラ投資のIRR

FIT(Feed in Tariff・固定価格買取制度)制度のもと、長期的に安定的な収益が見込める太陽光発電事業への投資を中心とした国内インフラファンドのIRRは5%-6%程度の様です。

出典)https://tokotokoblog.com/solar/post-1556/

もっとも、国が定めるFIT制度に守られた太陽光発電は不動産投資よりも収益に対するリスクは低いのではないかという見方もあり、インフラ投資への利回り水準もJREIT等の水準に近づいていきているのではという業界の噂話もあります。

また、FIT制度が創設された際、買取価格の決定に際してはProject IRRで7%となるような水準を考慮して買取単価が設定されたそうですが、Project IRRで7%という水準はレバレッジをかけると10%台後半のEquity IRRが狙える水準ですので、ここ数年での国内太陽光事業の投資家間での競争の激化や進化が感じ取れると思います。

 

IRRは「収益率」を示すだけなので、その数値自体にはリスクが加味されていません。IRRが高くなるほどリスクも高まるのが普通なので、投資に対するリスクは別の方法を使って見極める必要があります。こうした注意点を踏まえれば、IRRは非常に便利で、様々な投資家・企業から使われる指標です。

 

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