用語解説目次
GK-TKスキームとは
- 匿名組合 (TK) とは
- 合同会社 (GK) とは
倒産隔離とは
アセットマネージャーとは
GK-TKスキームとは
GK-TK スキームとは、GK=Godo Kaisha つまり合同会社、TK=Tokumei Kumiaiつまり匿名組合を組み合わせた投資ストラクチャーである。出資した事業からの分配について課税されないので、海外投資家等が日本の電力やインフラプロジェクト等に出資する際に活用される事が多い。また、この投資に対して、ノンリコースローン (投資家に対して返済を遡及されないローン。別記事にて詳述。) を用いて資金調達を行う事が多いが、その場合には倒産隔離というストラクチャーを組む必要がある。倒産隔離スキームを組んだ場合、事業主体の会社は自ら意思決定ができない仕組みとなるため、事業運営を代行するアセットマネージャーの存在が不可欠となる。アセットマネージャーは通常、事業への投資家が選定する。
匿名組合 (TK) とは
匿名組合 (TK) とは、民法上の組合を表す。「匿名」とは、議決権を持たないことを意味しており、当該事業に対して意思決定権を持たない形で投資すると言う事だ。「組合」とは、誰かと誰かが共同で事業を行う事を意味している。事業への「投資」と言ってよくイメージされるように、一般的な普通株式等で株式会社に投資をすると、投資家は投資先の事業について議決権を持ち、影響力を与えられる一方で、その事業の収益を分配される段階で課税される (配当税) 。一方、TK の形で出資すると、その事業の意思決定に関わらない代わりに、その事業から分配されるお金に対して課税がされない。これを税の導管性とか、パススルー課税とも言う。その名の通り、投資先の事業主体から「パススルー」された収益は、投資家自身の益金として算入され、投資家自身の課税所得の一部となり、結果としてその所得に実効税率をかけた分を法人税として投資家自身が支払う事になる。ここでポイントとなるのはTK 投資の税の導管性は海外投資家にも有効である点だ。このため、海外投資家が日本国内の事業に対して TK 出資した場合には、日本国内では課税所得が発生しないことになる(厳密には源泉徴収税は発生するが、二国間での租税条約等が発効していれば還付請求が出来る場合もある)。従って、投資家の母国が安価な法人税制を持つ国であれば、尚の事メリットが出るスキームだ。
参考まで、匿名組合に対して、任意組合(NK)というものもある。NK は商法上の組合で、「みんなでお金を出し合ってわいわい議論しながら事業を行う」というイメージで、NK 投資家は事業に対して影響力を持つことになる。そして、TK と同様に税の導管性もある。TK との唯一にして最大の違いは「無限責任」であることだ。株式会社や TK は、出資した事業が失敗した場合、自らが出資した金額を超えた責任を負わない「有限責任」が原則だ。他方、NK ではその原則に無い為、この形態が利用されることは稀有である。
合同会社 (GK) とは
GKとはGodo Kaisha(合同会社)の事で、その特質上、事業運営が容易なため、海外投資家からのインバウンドのインフラ事業への投資においてよく用いられる。対照的に、KK = Kabushiki Kaisha (株式会社) は、株主総会や取締役会など、商法にのっとった運営上の規定が細かく定められている。株式会社という仕組みの特質は、他人のお金を預かって、別の人が運営を行う為、運営に規律をもたらす意味があり、上述のような運営上の決まり事が多く、運営が面倒になっている側面があります。一方、GK にはそういった商法上の運用上の規定が細かく規定されていない。よくわかっている人同士がお金を出し合って、自分で事業を運営している、というイメージであり、玄人の間で行われるようなインフラ事業の投資の文脈には即している事が多い。
倒産隔離とは
インフラ投資においてはノンリコースローンが使われる事も多い。別記事の「プロジェクトファイナンスとは」で詳述するが、ノンリコースローンとは当該プロジェクト=プロジェクト事業主体から上がってくる収益でしかローンの返済をしない、その事業が失敗したとしても、それ以外に出資者に返済請求・訴求しないというものである。この形で融資が行われる文脈の中で、出資者が自らいつでも「破産します」と言えてしまうことは、銀行にとってみれば、返済をとりっぱぐれてしまうリスクにつながりかねない。そこで、出資者による自発的な倒産をさせない仕組みをつくる必要が生じる。ここで「倒産隔離」と言うストラクチャーが組成される。つまり、インフラ投資でよく用いられる会社形態であるGK が自分から破産すると言えない仕組みとするには、GKの所有者をモノを言えない主体にする必要がある。これを具現化する策として、一般社団法人に GK の出資持分を持たせた上で、同一般社団法人が自分たちの意思では破産できないようにしている。具体的には、一般社団法人の運営を担うのは、依頼された会計士などで、破産宣告しない旨の一筆を差し入れてもらった上で執務をしてもらう。
言葉だけだとわかりづらい部分もあるので、下図にてGK-TKスキームを使った場合のプロジェクト主体の事業会社(GK)のバランスシートを図示する。上述の通り、ノンリコースでのローンを銀行から借り入れる部分が貸方の上部に入る。匿名組合出資(TK 出資)部分が匿名投資家から為され、通常の持分への出資部分について一般社団法人等から為されます。この一般社団法人を運営するのが上述の「一筆差し入れた会計士」等となる。尚、このようなGK-TKスキームを使うには、実物資産を一旦証券会社等に信託として預け入れた上で、同信託資産からの儲けを得る権利(=信託受益権)を事業会社の資産とする必要がある点を付記する。
アセットマネージャーとは
上記の GK-TK を用いた倒産隔離のスキームにおいて、SPC は自分で意思決定をしない。それでは、SPC の日々の意思決定をする人はだれかと言うと、アセットマネージャーとなる。このことから、GK-TK スキームにはアセットマネージャーの存在が不可避となる。別の記事でアセットマネージャーについて詳述をする。