用語解説目次
財務モデリングに関する資格にはどんなものがあるのか
- 日本の資格
- 海外の資格
Financial Modeling Institute（FMI）とは
- FMI 発行の3 つの資格
AFMはどうすれば取れるのか
- AFMで問われる技能・出題範囲
- AFMの練習問題
CFMはどうすれば取れるのか
- CFMで問われる技能・出題範囲
- CFMの練習問題
財務モデリングに関する資格にはどんなものがあるのか
本ウェブサイト「上級財務モデリング講座」では、世界基準の財務モデリング技法や要諦の解説記事が掲載されているが、就職活動や転職活動の場面において財務モデリングのスキルがある事を客観的に示せるような資格があるのか？と言う事について解説する。
日本の資格
経済産業省の委託事業として日本CFO 協会が主宰している経理財務人材育成事業の一環としてのFASS (Financial Accounting Skill Standard) 検定というものの一部に、エクセルを用いた財務モデリングのスキルが含まれているとの事で、この試験で高得点を取ればモデリングスキルがあると言う事を客観的に示す材料の一部になるかもしれない。しかし、2019年5月時点において公式ウェブサイトの中に、明確に財務モデリングが試験範囲の一部を構成しているとの記載がなく、情報源となるサイトも個人のブログ等が中心で、時期も2010年前後である事から、本当に FASS 検定において財務モデリングが必須スキルとして問われているのか、今一つ定かではない。
海外の資格
一方、海外では Financial Modeling Institute が主宰する 3 つの資格と、Corporate Finance Institute が主宰する 1 つの資格 (Financial Modeling & Valuation Analyst) がある。どちらの団体もカナダ・トロントを本籍とする団体である。上述の FASS とは異なり、両方とも明確に財務モデリングのスキルを問う資格試験である事がウェブサイトから読み取れる。また、前者は物理的に試験会場に足を運んで行うタイプの試験で、後者はオンラインで受験をするタイプの試験だ。ウェブサイトを見れば書いてあるが、世界的に有名な財務アドバイザリーやコンサルティング企業では前者の FMI の資格受験が奨励されているので、この記事では FMI の資格に関する話題をもう少し詳述する。
Financial Modeling Institute (FMI) 主宰の 3 資格とは
FMI 発行の 3 つの資格の正式名称は以下の通り。
Level 1：Advanced Financial Modeler (AFM)
Level 2：Chartered Financial Modeler (CFM)
Level 3：Master Financial Modeler (MFM)
Level 1 に合格すれば、名刺に ”AFM” の肩書を入れられる上、Level 2 の試験の受験資格を得ることが出来る。同様に、Level 2 に合格すれば "CFM" の肩書を得る事ができ、Level 3 の受験資格を得ることが出来る。以下に先ず、第１ステップとなるAFM について、もう少し記載する。
AFM はどうすれば取れるのか
AFM試験日程・費用・申し込み方法
AFM の試験は年に 2 回、4 月と 10 月に受験できる。世界25か国以上の都市で受験ができ、東京でも受験が可能だ。受験料は定価 61,000円だが、早く申し込むと割引があったり、学生割引もあったりする (両者とも最大で約4割引き) 。公式ウェブサイトからオンラインで申し込みを行う。
AFMで問われる技能・出題範囲
公式ウェブサイトによれば、AFM の試験では企業の財務三票の連動モデルの作成が求められる。海外団体主催の試験なので、当然の事ながら試験問題は全て英語だ。制限時間 4時間の中で、財務モデルを構築する事が求められる。AFM の試験では、財務や会計の前提知識を極力不要とし、モデルの構築スキルを問うような出題が為される。例えば、事業会社における5年間の中期事業計画モデルの作成のようなもので、過去の実績と計画に基づき、売上、営業費用、設備投資と減価償却、法人税等の見積を行った上で、必要となる資金繰り計画に基づき損益計算書・キャッシュフロー計算書・貸借対照表の三票の作成を行う。そして収益の見積等についてベースケース・楽観ケース・悲観ケースの各々の前提条件を設定して事業シミュレーションを行う事のできるモデル作成等が求められる。
AFMの練習問題
公式ウェブサイトに過去の問題と、それに対する回答例が公開されている。受験準備に必要な時間は100時間程度との事だ。業務でモデリングを行っている方や、既にモデリングに自信のある方はもっと少ない時間で合格可能かもしれない。また、受験に不合格だったとしても再受験料（2019年5月現在 約200ドル相当）を支払えば再チャレンジもできる様なので、先ずは直近の試験に挑戦してみるのも良いかもしれない。
CFMはどうすれば取れるのか
続いて、Level 2 と呼ばれるCFM (Chartered Financial Modeler) について記載する。試験日程や受験可能会場はAFMと同様だ。
CFMで問われる技能・出題範囲
AFMとは異なり、実務で必要となる会計、財務、ファイナンス、投資やビジネスに係る知識理解も問われる性質の問題となっている。AFMと同様、制限時間 4時間の中で、4~6問の問いに答える形式だ。多通貨でのコスト計算や、加速償却での減価償却、多様なタイプの借り入れやコベナンツへの対応、転換社債など、AFMで作成する財務諸表よりも条件設定が細かく、Excelやモデルのみならず財務や会計の前提知識がないと対処できない問題が問われる。更に、AFMではBase, Best, Worstの 3シナリオの分析が求められたが、CFMでは感応度分析が求められる。
CFMの練習問題
AFMとは異なり、練習問題は公開されていない。
尚、Level 3 に相当する MFM (Mastered Financial Modeler) については、まだ試験そのものがスタートしていない。情報が追加で公開され次第、当ウェブサイトでも紹介していく予定だ。
