TRAINING THE STREET - TURBO MACRO
機能別評価サマリー
- オススメ度: ★★★★ (4/5)
- ナビゲーション機能: ★★★ (3/5)
- マップ生成機能: ★ (1/5)
- ツリー生成機能 ★ (1/5)
- フォーマット補助 ★★★★ (4/5)
- カスタマイズ性 ★★★★ (4/5)
- その他機能 ★★★ (3/5)
財務モデルのレビューに特化しているソフトウェアではありませんが、ナビゲーションや、フォーマット補助、ショートカットのカスタマイズなどが一通り揃った無料で便利なツールです。特にセルの参照元、参照先を把握するナビゲーション機能は財務モデルの全ての作業において基本となる機能であるため、これらの機能が無料で使えるのはとても嬉しいもの。マップの生成機能や、ツリーの生成機能はありませんが、フォーマットの補助機能に充実していて、フォント色やセルの背景色だけでなく、数値のフォーマットや小数点、枠線なども簡単に設定できるような工夫がなされています。ショートカットを自由に割り当て、共有・印刷できる機能なども付属しており、無料ですが一通りの実務に十分耐えられる機能となっています。以上を総合的に評価して、オススメ度は★★★★。
公式ページへTTS Turbo Macro オススメ機能一覧
- Turbo Precedents - 数式の参照元一覧を確認してセルへジャンプできる
- Turbo Dependents - 数式の参照先一覧を確認してセルへジャンプできる
- Cycle Manager - セルのフォーマットを同じショートカットで変化させる
- Auto Color Selection / Worksheet - セルの情報を自動判別してフォーマットを適用できる
- Utility Manager - Worksheet Control - 罫線や倍率など、ブック全体の設定が一括管理できる
- Utility Manager - Nuisance Keys - 一部のキーを微調整したり無効化できる
- Shortcut Manager - ショートカットを自由に設定変更できる
数式の参照元一覧を確認してセルへジャンプできる
Turbo Precedents
Turbo Precedents は、財務モデル内の特定のセルから参照元の一覧を作成し、参照元のそれぞれのセルへジャンプをしてくれるナビゲーション機能です。下記の図では、緑色にハイライトしたセルから Turbo Precedents を起動すると、エクセル右のパネルに Formula Tracer が表示され、下記の情報一覧を取得します。
- Cell: FS!R14 ... 選択したセルの位置
- Cell Value: 2,555,475 ... 選択したセルの値
- Formula (Calculation): = 'PL Ca'!R41 ... 選択したセルに入力されている数式
- Formula (Value): = 2,555,475 ... 入力されている数式を値で示したもの
- Precedents List ... 参照元のリスト一覧
ここでは分かりやすいように、選択セルを緑色にハイライトしていますが、実際にはハイライト機能はありません。上記の Precedents List 内から、2つ目の 'PL Ca'!R41 をクリックすると...
エクセル上で 'PL Ca'!R41 のセルへジャンプします。1つ目は最初に選択した Original cell である FS!R14 が残っており、これをクリックすることで選択したセルへいつでも戻ることができます。これは、ナビゲーション機能と呼ばれ、財務モデルをレビューする上で基本となる機能です。
数式の参照先一覧を確認してセルへジャンプできる
Turbo Dependents
Turbo Dependents は、Turbo Precedents の逆の機能で、参照元ではなく参照先、つまり選択したセルが使われている先の一覧を取得して表示します。エクセル右のパネルに Formula Tracer が表示されるのは同じですが、パネル下のリストが参照元一覧ではなく、参照先の一覧となっています。
上記の Dependents List 内から、2つ目の 'BS Ca'!R14 をクリックすると...
エクセル上で 'BS Ca'!R14 のセルへジャンプします。Dependents の機能は、財務モデル内の前提条件となる入力値が、計算のどこで使用されているか確認するために頻繁に使用します。財務モデル内の計算構造を後から変更・改変したりする際に、要らなくなった項目を削除する直前に、削除しようとしているセルがどこにも使われていないか確認するためにもこの機能をよく使います。
セルのフォーマットを同じショートカットで変化させる
Cycle Manager
TTS Turbo Macro では、設定されたショートカットを複数回押すことで、フォーマットを順番に変えることができます。例えば、フォント色のショートカットキーではデフォルト設定で、1回目:青、2回目:緑、3回目:赤、4回目:白、5回目:黒、6回目:青に戻る、という形でキーを押す回数に応じてフォーマットを変化させる機能がついています。Cycle Manager を使うことで、フォント色だけでなく以下の項目について、キーを押した際のフォーマットをカスタマイズできるようになっており、財務モデルの構築時に役立つ機能となっています。
- Font Color ... フォントの色
- Fill Color ... セルの背景色
- Border ... 枠線
- Number Format ... 数字の表示フォーマット
- Alignment ... 配置
- Decimals ... 小数点の数
Cycle Manager では、左にメニューが表示されており、それぞれをクリックすることで設定したい項目へ移動することができます。上記はフォント色の設定画面ですが、ショートカットキーを押す回数によって 1 回目、2回目、3回目、4回目、5回目のフォント色を自由に設定でき、使わない色はチェックを外すことで除外することができます。また、右上の Disable Shortcut を押すことで、項目全体のショートカットを無効にすることもでき、好みに合わせて使い分けることができるようになっています。
セルの情報を自動判別してフォーマットを適用できる
Auto Color Selection / Worksheet
財務モデル内のフォーマットについては、会社や作成者によって細かい部分が違うものの、数字の色については、一般的に以下のフォーマットで統一されています。
- Hardcodes ... ベタ打ち(直接入力)された値 -> 青
- Historicals ... 実績値 -> 青
- Formulas ... 数式 -> 黒
- Links to Other Worksheets ... 他のシートからのリンク -> 緑
- Links to External Sheets / Data ... 外部シートやデータソースからのリンク -> 緑
- Important Input / Error / Call Out ... 重要な前提、エラー、注意箇所 -> 赤
TTS Turbo Macro の Auto Color 機能を使えば、数値の種類を自動で判別し、設定したフォーマットへ変更することができます。Auto Color Selection では選択範囲のセルが、Auto Color Worksheet ではシート全体が対象となります。これらの自動判別の色は、Utility Manager 内の Auto Color セクションで自由に設定することができるようになっています。TTS Turbo Macro のデフォルト設定では、データベース色として紫色が設定されており、またデータベースの種類も Capital IQや、FactSet、Bloomberg、Thomson Reuters の中から選択できます。
罫線や倍率など、ブック全体の設定が一括管理できるUtility Manager - Worksheet Control
Worksheet Control では、ブック内のシート全体の以下のフォーマットを一括で変更することができます。
- Zoom ... 各シートの表示倍率
- Page View ... 通常表示 / 改ページ表示
- Gridlines ... グリッド線の表示 / 非表示
- Freeze Panes ... フリーズパネルの設定 / 解除
- Split Screen ... 画面分割の設定 / 解除
- Move to cell A1 ... 全てのシートで選択セルを A1 へ戻す / 現在の選択位置をキープ
これらは、TTS Turbo Macro を使わずともマクロなどで簡単に記述することができるため、必須の機能という訳ではありません。しかし、表示倍率の変更や、グリッド線の表示・非表示、また全てのシートの選択セルを A1 へ戻すなど、財務モデルの実務者が多用する機能がいくつか揃っており、マクロを書きなれていない初心者の方などが使い始めるにはとても便利な機能です。
一部のキーを微調整したり無効化できる
Utility Manager - Nuisance Keys
Nuisance Keys の機能を使えば、わずらわしいキーをいくつか無効にしたり、反応を遅らせたりできます。F1キーや、Scroll Lock、Number Lockを無効化したい人にとっては便利な機能です。1 Sec.delay はキーを長押ししなければ反応しないように設定でき、非常にユニークな機能だと言えます。
F1 キーは、Esc キーとセル編集の F2 キーに挟まれており、誤って押してしまう事が多いのですが、押してしまうとヘルプメニューが表示されてしまい、動作がもたつくためイライラします。初心者の場合、 F1 キーをそもそもキーボードから取ってしまう強引な方法もありますが、実はリボンの表示・非表示に Ctrl + F1 キーのショートカットが使えるため、F1 キーをキーボードから完全に取ってしまう方法はオススメしません。
ショートカットを自由に設定変更できる
Shortcut Manager
Shortcut Manager は TTS Turbo Macro の主要機能全てに自由なショートカットを設定できる機能です。下記19個の項目について、Ctrl、Shift、Altキーを自由に組み合わせて独自のショートカットを設定できます。ウインドウ下に、Import、Exportの機能がついており、現在のショートカットを TTS Shortcut ファイル (.tmsk) として保存でき、他の人と共有することができます。ショートカットの印刷機能も付属しており、痒い所に手が届く便利な機能です。
- Font Color ... フォントの色
- Fill Color ... セルの背景色
- Border ... 枠線
- Number Format ... 数字の表示フォーマット
- Alignment ... 配置
- Increase Decimals ... 小数点の桁数を増やす
- Decrease Decimals ... 小数点の桁数を減らす
- Trace Precedents ... 参照元をトレース
- Trace Dependents ... 参照先をトレース
- Auto Color Selection ... 選択範囲のフォント色を自動判別
- Auto Color Worksheet ... 現在のシート内のフォント色を自動判別
- Worksheet Control ... シートの倍率・枠線・表示など設定
- Zoom In ... 拡大表示
- Zoom Out ... 縮小表示
- Increase Font Size ... フォントサイズを大きく
- Increase Font Size ... フォントサイズを小さく
- Cycle Manager ... サイクルマネージャーを起動
- Utility Manager ... ユーティリティマネージャーを起動
- Shortcut Manager ... ショートカットマネージャーを起動