外資再生エネルギーファンド神尾太郎さん対談

May 20, 2019
インタビュー
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講座目次

amp神尾太郎さんとの対談

「簡単な自己紹介をお願いします」

「一番最初に財務モデリングの業務と出会ったきっかけは何ですか?」

「具体的にどのような業務で財務モデルに関わっていましたか?」

「財務モデルに関わる上で、一番印象に残っている思い出やエピソードを教えて下さい」

「財務モデリングはキャリアの中でどういう風に役立ちましたか?」

「これから財務モデリングを学ぶ人たちへ一言」

あとがき

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<amp神尾太郎さんとの対談>

東京モデリングアソシエイツ (TMA) 代表の川井です。PwC モデリングチームの元同僚であり、これまで投資銀行や政府系ファンドを経て、現在 amp にて投資業務を担当されている神尾太郎さんと対談を実施しました!

amp についてはこちら
https://amp.energy/
 

「簡単な自己紹介をお願いします」

神尾
「本日はお時間ありがとうございます。ご紹介いただきました amp の神尾です。新卒で PwC へ入社後、SMBC日興証券、株式会社 海外通信・放送・郵便事業支援機構 (JICT) を経て、現在は amp という太陽光を中心とした再生エネルギーファンドにて投資業務を担当しています。」

川井
「こちらこそありがとうございます。神尾さんとは PwC のモデリングチーム時代から個人的に長い付き合いですね。新卒で PwC へ入社されたとのことですが、コンサルティング業界を志望した理由は何だったのでしょうか?」

神尾
「たまたま BCG へ入社した大学の先輩から話を聞く機会があり、こういう世界もあるんだなと興味を持ったのがきっかけですね。親戚に弁護士の者がいたため法学部へ進学したのですが、法曹界に興味を持つことはありませんでした(笑)」

「一番最初に財務モデリングの業務と出会ったきっかけは何ですか?」

神尾
「財務モデリングに出会ったのは PwC に入社して 3 年目の時です。元々 PwC へは M&A のトランザクションや事業再生などに興味を持って入社したのですが、配属されたのが IT コンサル寄りの部署だったため、2 年が経った頃に転職を検討していました。」

川井
「神尾さんは PwC 内のコンサルティングの部署から、社内異動でモデリングの専門チームへ移籍されたんですよね。」

神尾
「はい。ちょうど転職を検討していた頃、社内で財務モデリングチームを立ち上げるというアナウンスがあったため、自身の希望するキャリアに近い業務だと感じ、社内異動のチャレンジ制度に応募しました。結果、幸運にもメンバーに選ばれることとなり、そこで初めて財務モデリングと出会いました。」

川井
「財務モデリング業務に対する最初の印象はどうでしたか?」

神尾
「"エクセルって数字を入れて計算するものなんだ" というのをモデリングチームで初めて知りました(笑)。コンサルティング業務でもエクセル自体は使っていましたが、IT システム導入時の要件定義書の作成に使っていたため、エクセルのセルには文字を書いたり、オブジェクトを貼り付けたりしていました。」

川井
「それは衝撃ですね (笑)」

神尾
「エクセルの使い方が新鮮だったのもあり、とても楽しく業務をさせていただきました。また、チーム全体としての財務モデルの質の高さにも驚きました。PwC を退職してからもずっと Lenovo を使っていますが、これは PwC 時代のモデリング業務の名残ですね (笑)」

「具体的にどのような業務で財務モデルに関わっていましたか?」

川井
「PwC では、クライアントのためにモデルを構築する、という業務でご一緒していましたね。クライアントのため、というのは事業投資のためのモデルであったり、ファイナンスのためのモデルであったり、経営計画策定のためのモデルであったり。」

川井
「そういう意味で、PwC での財務モデルとの関わり方は知っているのですが、投資銀行、ファンドへとキャリアを進んできた中で、それぞれどういう業務で財務モデルに関わってきたのか話していただけますか?」

神尾
「PwCでは、対象とする事業内容を、財務三表に落とし込むことが基本的なゴールでした。また、成果物としての財務モデルを、エクセルファイルとして直接クライアントに提供していました。そういった意味で、PwC 時代はエクセル内の全ての情報に気を遣わなければいけなかったため、とても緊張感のある業務でした。」

神尾
「SMBC 日興時代は、M&A などを目的としたバリュエーションのための財務モデルを作成していました。財務三表の作成も当然行いますが、事業内容を細かく分解するオペレーションモデルというよりは、バリュエーションのための DCF モデルや LBO モデルを作成していました。」

神尾
「ファンド時代は、JICT が通信インフラのセクターをメインの投資ターゲットとしていたこともあり、プロジェクトファイナンスを用いたスキームの案件がメインでした。財務モデルのゴールとしてはやはり財務三表となりますが、資金調達やファイナンス部分の計算に重きが置かれたモデルでした。ファンドでは、投資の最終的なリターンであるIRRを高めるために必要な施策を検討する必要があるため、他人が作ったモデルを確認することなどもあり、ツールとしてのモデルを活用していました。」

「財務モデルに関わってきた中で、一番印象に残っている思い出やエピソードを教えて下さい」

神尾
「印象に残っている案件で言うと、PwC モデリングチームでの小売業界の案件です。エクセル上に日本地図を貼り付け、地図上にチャートのグラフを表示することで、地域ごとの店舗の売り上げを視覚的にシミュレーションできるモデルを構築した案件です。まだモデリングチームに異動して本格的な業務を始めたばかりだったこともあり、とても印象に残っています。」

神尾
「また、製造業関連会社の全事業部門の結合に関わった業務も印象的でした。実際に工場に足を運んで、実際の製造現場を見たり、現場の方に直接話を聞いた上で、事業内容を財務三表の形でエクセルに流し込むという作業は非常に良い経験でした。」

川井
「工場現場へは一緒に足を運びましたね。私にとっても印象深いプロジェクトでした。逆に、一番辛かったのはどんな案件ですか?」

神尾
「一番大変だったのは、航空機関連案件のモデリングでした。航空機1機体ごとに財務三表を計算していたため、エクセル内には 100 枚以上のシートに渡って計算式が組まれていました。当時は PC のスペックも限られており、普通に計算していると熱暴走を起こしてしまうため、対策としてオフィスビルの排気口から出てくる風でPCを冷やしながら仕事をしていたのを覚えています。冬だったので何とかなりました (笑)」

川井
「こうして聞いてみると、全部 PwC のモデリングチーム時代の経験ですね。」

神尾
「SMBC日興時代や、JICT 時代では自分が財務モデルを作成することよりも、他人が作成したモデルをレビューする機会も相応にありました。そのため、モデル構築ならではのエピソードというよりは、やはり属人的に作られたモデルをチェックするという作業がとても辛かったです。PwC 時代にレビューの実務的なスキルは一通り獲得したつもりですが、そういったノウハウを用いても、やはり他人が作ったモデルを理解するというのは、大変な作業であることに変わりないと感じました。」

「財務モデリングはキャリアの中でどういう風に役立ちましたか?」

神尾
「私は会計士や税理士ではなかったので、財務諸表そのものを深く理解していた訳ではありませんでした。それでも財務モデルの作成を通して、会計や税務を専門としていなくとも、財務三表の繋がりというものを体得できたことは、今でも非常に役に立っています。」

神尾
「また財務モデルを通じて、エクセル上に事業内容を表現できるということを学びました。エクセル上で事業内容を表現することによって、会社の資料を読んだり、ヒアリングをするよりも、計数的な視点から早く正確に事業を理解することができるようになります。財務三表をシミュレーションするという特性上、常に事業全体を見渡すことができる所が財務モデルの面白い所です。」

川井
「確かに、良くできた財務モデルとしての事業計画を見れば、ビジネスの全体像を素早く把握できるようになりますよね。」

神尾
「財務モデル構築の過程で整理されていくもの、完成した財務モデルを見て把握できるもの、両方のものがあると思います。」

川井
「転職の際に財務モデリングの知識や経験は役に立ちましたか?」

神尾
「役立ちましたね。特に金融業界では比較的ジュニアのポジションで財務モデルを任されることが多いため、面接では財務モデルやファイナンスなどといった、ハードスキルに焦点を当てて採用される傾向にあると思います。ファンドではモデリングのテストが面接のプロセスにあり、そういった場面でアピールすることができたと感じました。」

「これから財務モデルを学ぶ人たちへ一言」

神尾
「個人的に思うこととしては、財務モデルは好き嫌いがはっきり分かれる業務だと思います。好きになれば自然と上達すると、そもそも嫌いだと思うなら続かないと思います。そういった意味では、好きになることが一番大事だと思いますね。」

川井
「なるほど、川井はエクセルマニアなので分かる部分もあります。しかし、エクセルに苦手意識を持ったまま、業務でどうしても財務モデルに関わらなければならない人達もいると思います。そういった人達へアドバイスはありますか?」

神尾
「そういう意味では、少しずつ好きになれそうな要素を探すというのが良い方法だと思います。例えば自分は、個人の支出管理や、自分の給与計算、不動産ローンのシミュレーションなどを全てスプレッドシートを使って作成しています。いきなり財務諸表を作ろうなどと考えず、まずは身の回りの生活に関係する数字を、エクセルで管理するという所から始めてみるのも良いかもしれません。」

川井
「やはり好きになるのが一番大事だということですね。」

神尾
「セルに数字を入れて整理するという習慣ができれば、少しずつ関数を使わざるを得なくなってきます。例えば支出を項目別にまとめる場面が出てくれば、自然と SUMPRODUCT や SUMIF 関数を使わざるを得ません。そういった必要に応じて少しずつ苦手意識を無くしていけば、そこから業務の中で好きな要素を見つけることができるかもしれません。」

<あとがき>

今回は amp の神尾太郎さんと対談をしていただき、キャリアの中での財務モデルとの色々な関わり方や、印象に残ったエピソードなどをお話させていただきました。財務モデリングWeb講座では、財務モデルを用いて事業投資やファイナンスなどの第一線で活躍しているプロフェッショナルの方々を今後も紹介していきます。神尾太郎さん、ありがとうございました!

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