講座目次
Excel 環境設定はなぜ重要か
Excel オプションの開き方
Excel の標準フォントを設定する
セルの編集が自動的に数式バーに移動するよう設定する
開発タブを表示する
ブックの計算は必ず「自動」に設定する
Excel 内での反復計算は必ずチェックを外す
目盛線 (枠線) を非表示に設定する
Personal.xlsb をカスタマイズする
Excel 環境設定はなぜ重要か
Excel の環境設定がきちんとされていない状態で作業するのは、例えるなら整理されていないキッチンで調理をするようなものだ。調味料が取りにくい位置にあったり、野菜を切る場所が汚れていたりすることで、全体的に時間がかかってしまうばかりか、最終的に料理にゴミが混入したり、調味料の分量を間違えたりする。Excel も同じで、重要なメニューは最初から表示しておいたり、セルを編集しやすいように設定を工夫しておくことで、間違いやミスを大幅に防ぎ、作業時間を短縮することができる。今回は、特に財務モデルの現場で押さえておくべきポイントを解説する。
Excel オプションの開き方
Excel オプションは、[ファイル] タブをクリックすると、左下に [オプション] というメニューが表示されるので、そこからオプションを開くことができる。
Excel の標準フォントを設定する
Excel にはブックごとにデフォルトとなる標準フォントとサイズが設定されている。新しいシートを作成する際にはこの標準フォントとサイズが自動的に設定された形でシートが作成されるため、あらかじめオプションからフォントの種類とサイズを設定しておくと便利だ。財務モデリング講座では、デフォルトのフォント設定として、Arial の 9pt を推奨しているため、初めに標準フォントとして設定してしまおう。
標準となるフォントは、[オプション] [全般] タブ、 [新しいブックの作成時] という項目から設定できる。ここで、規定フォントを Arial、フォントサイズを 9 に設定する。
セルの編集が自動的に数式バーに移動するよう設定する
エクセルのデフォルト設定では、セルが表示されている場所で直接編集が行えるようになっている。ただし、この設定は財務モデリングにおいてはとても煩わしい。下記の例を見てみよう。
はっきり言って、とても見にくい。上記の例は 1 行なのでまだ辛うじて編集できるものの、これが 2 行、3 行となってくると () やカンマの位置を誤認したり、入力を間違えたりする原因になる。これを防ぐために、セルの編集は必ず数式バーで行うようにしよう。下記の例を見ると、数式バーで編集をする方がはるかに見やすいことが分かる。
デフォルトの設定のままでも数式バーをクリックすれば、数式バーで編集はできるのだが、オプションから常に数式バーで編集を行えるよう設定を変更できる。[オプション] [詳細設定] タブ、 [詳細オプション] という項目の中に、「セルを直接編集する」というアイテムにチェックがついていると思うので、チェックを外しておこう。この設定をしておくことで、セルを編集する際には自動的にフォーカスが数式バーへ移動することになる。
開発タブを表示する
エクセルには、開発タブというタブが存在するのだが、デフォルトで非表示に設定されている。開発タブの中には、VBE の表示画面や、アドインの設定、またコントロールと呼ばれるボタンなどの選択メニューがあり、財務モデリングを行う上で、とても使う機会が多い。そのため、開発タブが常に表示されるよう設定を行う。[オプション] [リボンのユーザー設定] タブを開くと、ウインドウ右側にメインタブの一覧が表示されるので、その中の [開発] にチェックを入れることで、開発タブが常に表示されるようになる。
ブックの計算は必ず「自動」に設定する
投資銀行などで、計算量が多い財務モデルを編集する時のために、常にブックの計算を手動に設定している人をみかけるのだが、今すぐに計算を自動に戻して欲しい。ブックの計算を手動に設定していると、ブック内で循環計算のアラートが作動せず、エラーチェックからも計算が循環しているかどうか確認ができない。また、VBA を用いて一部の計算を行う際にも、数値が正しくアップデートされずに、エラーを引き起こす原因になる。例外的なケースにおいて一時的に手動の設定を用いることもあるが、通常は必ずブックの計算を自動に設定しておこう。設定の場所は、 [オプション] [数式] タブの一番上にある [計算方法の設定] から、ブックの計算を自動を選択すればよい。ちなみに、この設定はエクセルファイルごとに記録されているため、他人が作成したエクセルファイルを開く際には計算が自動に設定されているか必ず確認しよう。
Excel 内での反復計算は必ずチェックを外す
エクセルには循環計算が発生している場合、自動的に反復計算を行って計算を収束されてくれる機能がある。こちらも、投資銀行やコンサルティングファームなどで正しい循環計算の処理を行わずに、この機能を使っている人をみかけるのだが、今すぐに反復計算のチェックを外して欲しい。この機能は計算の反復回数上限が決まっている上に、計算が正しく収束したかどうかの判別ができない。反復回数の上限に達した時点で、計算が収束していなくともそこで計算がストップしてしまうし、そもそも計算が収束せずに発散してしまう計算であっても正しい結果のように見えてしまうこともある。意図せず循環計算が発生していたとしても、反復計算のチェックがついていることによってアラートが作動しないため、様々な点でリスクが大きい機能となっているため、必ずチェックを外してこの機能を使用しないようにしよう。設定の場所は、 [オプション] [数式] タブの一番上にある [計算方法の設定] の項目の右側にある。この設定もエクセルファイルごとに記録されるため、反復計算のチェックが外れているか毎回確認しよう。
目盛線 (枠線) を非表示に設定する
財務モデリング Web 講座では、目盛線をデフォルトで非表示にすることを推奨している。目盛線を非表示にすることで、モデル構築の際に用いられている罫線や色が強調され、全体的にフォーマットが見やすくなるためである。目盛線を表示した場合の計算シートと、非表示にした場合の計算シートを下記に掲載するので、見比べてみよう。目盛線を非表示にした方がフォーマットが強調されて分かりやすいはずだ。
設定の場所は、 [表示] タブの中に、同じ名称の [表示] 項目があり、左下に [目盛線] の項目があるため、このチェックを外すことで目盛線が非常時となる。目盛線もエクセルファイルごとに設定・記録されるため、目盛線がついていたら上記の場所から非表示に設定しよう。
Personal.xlsb をカスタマイズする
エクセルには、Personal.xlsb と呼ばれる個人マクロを記録しておくファイルが存在する。Personal.xlsb はエクセル起動時に毎回自動的に読み込まれるため、Personal.xlsb のファイル内によく使うマクロを登録しておけば、いつでもマクロを呼び出して使うことができる。Personal.xlsb に対する詳細な説明や、財務モデリング Web 講座が推奨する設定方法については、下記の記事を参照して欲しい。
財務モデリングにおいて実務必須なカスタムマクロ設定方法
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